接客と組織の、
理論。
人が決めるまでの順序。決めるために揃う四つ。同じ話が人によって違って届く理由。
決まるまでの、順序について。
人が何かを決めるまでには、順序があります。その順序と、なぜ順序が結果を左右するのかについて。
次に気になることは、
決まっています。
お客様の関心は、思いつくままに動くわけではありません。ひとつの不確かさが解けると、次の不確かさへ移ります。
信用できそうだ、と思えて、はじめて自分の話をしようという気になる。話を分かってもらえて、はじめて提案を聞く気になる。順番があります。
この移り変わりと説明の順序が合っていると、お客様は情報を押し込まれている感覚を持ちません。知りたい順に答えが出てくる、と感じられます。
同じ内容を話していても、早すぎれば「なぜ今その話を」となり、遅すぎれば不安を抱えたまま聞くことになる。内容だけでなく、時機が価値を決めます。
お客様の内側で、
何が起きているか。
それぞれの段階には、お客様の内側で解かれるべき問いがあります。
そして段階は、気持ちを温めるものと、冷静に確かめるものが交互に来ます。温めるだけでは、店を出たあとに冷えて外れる。確かめるだけでは、動く理由が生まれない。
この体系を ONDO と呼んでいます。エスペラントで波。日本語の温度と同じ音です。
ラポール温
この人を、信用してよいか。
警戒が解けて、話せる状態になること。ここが済むまで、どれだけ丁寧に質問しても、返ってくるのは差し障りのない答えです。
ここが弱いと 次で本音が出ず、情報が足りないまま進むことになります。
ヒアリング冷
自分の状況を、分かってもらえるか。
お客様自身がまだ言葉にできていない不便や制約を、一緒に明らかにしていきます。多くの方は、来店の時点では自分が何を欲しいのかを正確には持っていません。
ここが弱いと 次の提案が一般論になり、その方に向けた話にならなくなります。
プレゼン温
それは、何ができるものなのか。
その商品やサービスが、その方の暮らしのどこにどう作用するのかを示します。機能の列挙ではなく、生活がどう変わるかの話です。
ここが弱いと 次で問題の処理だけが進み、欲しいという気持ちが生まれません。
コンサル冷
本当に、自分に合うのか。
一般的な価値が、その方の条件でも成り立つかを確かめます。合わない点があれば、そこも含めて明らかにします。要らないものを要らないと言えるのは、この段階です。
ここが弱いと 決めたあとに迷いが残り、それが後で表に出ます。
クロージング温
では、どう決めればよいか。
固まった意思を、実際の手続きに移します。前の四つが済んでいれば、押す必要はありません。確認するだけで決まります。
ここが弱いと 決まりかけていたものが先送りになり、そのまま流れます。
ケア冷
この選択で、大丈夫だったか。
使えるようになるまで見届けます。買った時点では、まだ価値になっていません。使えるようになって、はじめて価値になります。
ここが弱いと 不安が残り、取り消しやご指摘として戻ってきます。
後の段階は、前の段階の
宿題を引き受けます。
決めきれない方に、決め方の話をいくら重ねても動きません。多くの場合、止まっている原因はもっと前にあります。
信用が足りずに本音が出ていない。事情が分かっていないので提案がずれている。魅力が伝わっていないので、そもそも欲しくない。その未処理を、最後の段階がまとめて背負っているだけです。
| 表に出る症状 | 実際の原因 |
|---|---|
| 決めきれない | 合うかどうかの不安が残っている |
| 提案が響かない | 事情が十分に分かっていない |
| 質問が出ない | まだ話せる関係になっていない |
| あとで取り消される | 納得が追いつかないまま決まった |
決める気持ちは、最後に突然生まれるものではありません。段階ごとに少しずつ積み上がり、あるところで決断に変わります。
前が十分に済んでいれば、こちらが切り出す前に「それにします」と言われます。逆に、積み上げのないまま最後だけで越えさせると、その気持ちは店を出たあとに戻ります。
丁寧なほうが、
速く終わります。
順序が合っていると、話が行き来しません。同じ説明を繰り返さず、疑問が後から出ず、決めたあとに戻ってこない。
雑な接客は、その場では短く見えます。しかし質問への対応、再説明、取り消しの処理まで含めると長くなります。丁寧に一つずつ解くほうが、結果として短い。
そして速さは、お客様の時間を奪うのではなく、返します。整理が早く済めば、その分をご本人の検討に使っていただけます。持ち帰られた場合も、次にお会いしたときに最初から説明し直す必要がありません。
短時間なのに置き去りがない接客を受けると、この人は状況を把握している、という安心が残ります。それが評判になり、指名と紹介につながります。
強い段階は、
人によって違います。
六つのうち、自然にできる段階と、意識しないと抜ける段階があります。そしてその偏りには、傾向があります。
よく話せる人は、関係づくり、価値の提示、決断の後押しが得意です。よく聞ける人は、事情の把握、適合の確認、購入後の支えが得意です。
どちらも強みです。ただ、片方だけだと届く相手が限られます。強みを残したまま、もう一方を足す。これが訓練の中身になります。
段階に分けてある理由の一つがこれです。全体を「接客」とひとまとめにすると、どこが抜けているのかが見えません。
この偏りがどこから来るのかについては、別ページにまとめています。情報代謝について →
一つでも欠けると、
人は決めません。
信用・感動・解決・誘導。恣意的な四項目ではなく、決めるという働きの全体です。ONDO が順序を扱うのに対し、四つのコアは条件を扱います。順序が正しくても、条件が欠けていれば決まらない。別々に点検できます。
信用・感動・解決・誘導。一つでも欠けると、人は決めません。四つは、決めるという働きの全体です。
各コアの中は、基礎から応用の順に並んでいます。境界のないものが先、意図して使う技法が中、知っておく効果が後。
線は、一つです。
| 接客 | 搾取 |
|---|---|
| その方がもともと持っている必要と判断を、進めやすくする | 存在しない必要を作る |
| 決めたあとも、その方が納得している | 後で気づく形で決めさせる |
| 効果を伝えても、結果は変わらない | 効果を伝えたら、成り立たない |
三つ目が判定に使えます。「いまこういう効果を使いました」と言えないなら、線を越えています。
心理効果は、知らない人に対してしか効きません。全部を集めて、名前をつけて、境界を書いて公開すれば、それは使われにくくなります。これは武器の目録ではなく、武装解除のための目録です。
同じ話が、人によって
違って届くこと。
なぜそうなるのかを、構造として説明する見方があります。
伝わる人と、
伝わらない人がいます。
同じことを、同じ言い方で伝えたのに、片方には届いて、もう片方には届かない。よくあることです。
たいていは、相手の理解力や、こちらの伝え方の問題として片づけられます。あるいは、相性が悪かった、で終わります。
ただ、注意して見ていると、届かない相手には、いつも同じ種類の話が届いていないことに気づきます。逆に、その人にはよく届く話の種類もある。
偶然ではなく、受け取り方に決まった経路があると考えたほうが、説明がつきます。
情報にも、
消化の仕方があります。
食べたものが、そのまま身体になるわけではありません。取り込み、分解し、必要なものを使い、残りを出す。人によって、消化しやすいものと、しにくいものがあります。
情報も同じように扱われている、という見方があります。外から来たものをそのまま受け取るのではなく、決まった経路を通して取り込み、変換し、出している。これを情報代謝と呼びます。
経路の組み合わせが人によって違うので、同じ情報でも、入りやすい人と入りにくい人が出てきます。能力の差ではなく、経路の違いです。
何を、
受け取りやすいか。
情報は、大きく四つの領域に分けられます。それぞれに、外へ向かうものと、内へ向かうものがあります。
- 実務・成果何がどれだけ効率よく実現できるか。事実と数字。
- 体系・整合筋が通っているか。分類と構造。
- 場の空気その場の感情がどう動いているか。熱量。
- 個人的な距離この人とどういう関係にあるか。近さと信頼。
- 力と時機いま押すべきか。勢いと決断。
- 心地よさ身体がどう感じているか。快適さと加減。
- 可能性ほかにどんな道があるか。思いつきと発想。
- 見通しこれはどう転がるか。流れと先読み。
この八つを、誰もが同じ強さで扱えるわけではありません。自然に使えるものと、意識しないと働かないものがあります。その配置の違いが、型と呼ばれるものです。
苦手なところは、
誰かに埋めてもらえます。
得意な領域では、労力をかけなくても質の高い判断ができます。反対に、弱い領域では、どれだけ意識しても疲れが先に来ます。
面白いのは、弱い領域ほど、それを持っている相手を強く必要とすることです。自分では扱えないので、誰かに扱ってもらえると、深く満たされます。
相性が良いと感じる関係の多くは、この補い合いが起きています。好き嫌いではなく、噛み合わせの問題です。
逆に、どうしても疲れる相手もいます。相手が自然にしているだけで、こちらの弱いところに触れてしまう。これも、悪意ではなく構造です。
二人の型から関係の形を見るには、16 Relations ↗。点数ではなく、噛み合い方が返ってきます。
決めつけるためでは、
ありません。
型を知ると、人を分類したくなります。ただ、それをやると元も子もありません。「あの人はこういう人だ」で止まった時点で、相手を見なくなります。
本来の使い道は逆です。自分を物差しにしないための道具です。
合わないと感じたとき、それを相手の悪意や怠慢として受け取るか、構造として受け取るかで、その後がまったく変わります。悪意なら腹が立ちますが、構造なら手が打てます。
見えないままだと、疑いが生まれます。疑いは態度に出て、関係が本当に壊れていきます。見えていれば、そこまで行きません。
誰をどこに置くかを、
構造から決める。
私たちはこの見方を、接客と組織の設計に使っています。
同じ人でも、組む相手と任される役割で結果が変わります。相性を経験と勘で判断している限り、うまくいっても再現しません。
誰と組ませると力が出るのか。誰の下に置くと伸びるのか。何を渡せば、その人が本当に満たされるのか。ここを構造から決めます。
接客でも同じです。お客様によって、響く言い方が違います。こちらの得意な説明を繰り返すだけでは、届く相手が限られます。
この見方について。
情報代謝という考え方は、ソシオニクスと呼ばれる体系の中核にあります。1970年代の東欧で始まり、現在も各国で研究が続いています。
日本では、一般社団法人 日本ソシオニクス協会が、資料の翻訳、理論の整理、診断の提供を行っています。弊社代表の勝山晃太郎が、同協会の代表理事を務めています。
協会は、型を「あなたを決める答え」としては扱っていません。自分の経験を別の角度から見るための、静かな道具として位置づけています。私たちの使い方も同じです。
一般社団法人 日本ソシオニクス協会理論・32タイプ・関係性・診断。弊社代表が代表理事を務める ↗ 16 Relations二人のタイプを選ぶと、関係の形が分かる。16の関係の解説 ↗
ライブラリ接客に働くものの目録。信用・感動・解決・誘導、261項目 研修サービスこの理論を、現場で使える形に ご相談現場の話をお聞かせください